美味しそうな駅弁
日本発祥

世界初の駅弁は宇都宮で誕生

鉄道とともに生まれた「旅のお供」

日本で最初の駅弁が登場したのは、1885年(明治18年)のことです。場所は栃木県の宇都宮駅とされており、鉄道網の発展とともに誕生しました。この年、東北本線が開通し、上野から宇都宮まで鉄道で移動できるようになったことが大きな転機となります。

当時の駅弁は、竹の皮で包まれた握り飯2個とたくあんをセットにした非常に素朴なものでした。販売元は宇都宮駅の近くにあった旅館「白木屋」だったといわれており、簡便で持ち運びやすく、列車の中で手軽に食べられる点が旅人に喜ばれました。

駅弁は単なる食事というよりも、「旅の風情」を彩る存在として発展していきます。車窓からの景色を眺めながら弁当を開くという時間そのものが、鉄道旅行の一部となっていったのです。

地域色が生んだ多様なスタイル

その後、駅弁は全国に広まり、各地の名物料理や地元の素材を活かした独自のスタイルが生まれていきました。東北地方では牛肉や海鮮、関西では炊き込みご飯、九州では鶏めしなど、地域性が反映された味わいが人々を魅了してきました。

また、器にもこだわりが表れ、木製の容器や陶器、さらには駅ごとのオリジナルパッケージなどが登場します。中には「記念に持ち帰りたくなる」ほどの凝ったデザインも多く、食後も旅の思い出として形に残ります。

地方の小さな駅でも、その土地ならではの食材を使った駅弁が登場することで、地域の魅力を伝える役割も担ってきました。鉄道利用者の減少に伴い販売数はかつてほどではないものの、地域振興の一端として駅弁文化は今も根強く支持されています。

現代に息づく「駅弁」という文化

現在の駅弁は、単なる移動中の食事という役割を超え、旅の目的の一つとしても楽しめる存在になっています。駅弁大会や百貨店の催事では、地方の人気駅弁が一堂に会し、購入のために行列ができるほどの盛況ぶりです。これは、駅弁が「食べる文化財」として愛されている証でもあります。

加えて、冷蔵技術や輸送手段の進化により、かつては現地でしか味わえなかった駅弁も、インターネットで取り寄せが可能になりました。観光需要の変化に応じて、駅弁もまた柔軟に形を変え続けています。

一方で、伝統を守る老舗弁当店も多く存在し、手作業による製造や地元産の素材にこだわる姿勢は変わっていません。その姿勢こそが、日本人の「こだわり」として駅弁文化を支え続けているのではないでしょうか。

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