レストランやカフェなどの店頭・店内に陳列されている食品サンプル。その発祥とこれまでの歴史についてまとめました。
食品サンプルの発祥
食品サンプルが誕生したとき、きっとここまでの普及や広がりは想定されていなかったのでしょう。明確な記録や製作技術の進歩に関する資料は残されていません。
発祥については複数の説があり、初めて食品サンプルの事業化に成功した食品模型岩崎製作所・岩崎瀧三氏を始まりとするもの、初めて店頭に食品サンプルを陳列した白木屋の食品模型製作に携わった須藤勉氏を始まりとするもの…などがあり、同じ時代に、違う職人・研究者から誕生した…という考え方が有力なようです。
こうして生まれた食品サンプルは、ただのメニューの見本ではなく、集客アップのためのツールとして全国各地に広がっていきました。
初期の食品サンプル
大正末期から昭和初期に誕生した初期の食品サンプルは、現在とは違い、蝋を固めたものが一般的でした。実際の料理を寒天を使って型取りし、そこに色付けした蝋を流し込み、固まったら色を塗って…という作業を、すべて手作業で行っていたそうです。盛り付けの仕方や量なども実際の料理に近く、食器類も実際にお店で出していたものを使用しており、「本物」に近い食品サンプルがつくられていたのです。
1970年代の食品サンプル
食品サンプルの材料が蝋から合成樹脂へと変わっていったのは、1970年代に入った頃でした。蝋の食品サンプルは熱に弱く溶けやすい、運ぶ際に壊れやすいといった欠点がああり、その改善のために合成樹脂が用いられるようになったのです。また金型が開発されて、生産が簡略化されたのもこの頃。よりリアルな食品サンプルを簡単に製作できるようになりました。
フォークが浮いたスパゲッティ、箸が浮いたラーメンなどの表現方法が登場したのも、1960~1970年代だったとされています。
現在の食品サンプル
現在の食品サンプルは、飲食店の集客アップツール…という枠を超えて、日本発祥の文化として幅広く知られるようになりました。業務用ではなく一般向けにも販売されるようになり、部屋に飾るインテリアや小型化したアクセサリー・キーホルダーなどの食品サンプルも登場。国外観光客からも人気があり、定番のお土産にもなっているようです。
最近では食品サンプルづくりを体験できるお店や、製作キットの販売も出てきています。食品サンプルは、予想外の広がり・普及を見せた日本文化の代表といえるでしょう。