日本で発祥した絵文字は、今では世界中で使用されるようになり、デジタルコミュニケーションでは欠かせないものになっています。2015年にはアメリカの前大統領・オバマ氏が日本を代表する文化として「空手、カラオケ、マンガ、アニメ、そして絵文字」として挙げ、これらの文化を育んだことに感謝の意を示したほど。こちらでは絵文字の歴史と海外から見た絵文字文化について紹介します。
絵文字の歴史
はじまりはポケベルのハートマーク
絵文字のはじまりは、ポケベル時代に流行したハートマークでしょう。当時ポケベルで送ることができたメッセージは、たった10~20文字程度。もちろん今のような絵文字はなく「イマドコ?」「イマカライク」といった無機質な文章で、感情が伝えづらく、ときには怒ってると勘違いされることも。そんな感情が伝わりにくいメッセージをかわいくしてくれるハートマークは、またたくに爆発的な流行を起こしました
そんなポケベル全盛期。ドコモから1998年に登場した「インフォネクスト」は漢字も表示できる最新機種…でしたが、文字セットのなかからハートマークが削除され、ハートマークが使えなくなってしまったんです。すると、10代を中心とした若者が一気に他会社に流出。「ハートマーク事件」と呼ばれるほど、大量の顧客を失う結果になってしまいました。
1999年に世界初の絵文字が導入
ハートマーク事件から、コミュニケーションにおける絵文字の重要性を学んだドコモ。インターネット通信が可能な携帯端末iモードに絵文字を搭載し、1999年に世に送り出したのです。絵文字の企画開発を行ったのは栗田穣崇さん(くりたしげたか)という男性で、ほぼ彼1人で行われました。当時の絵文字は、12ピクセル×12ピクセルという非常にシンプルなもの。顔やもの、場所を表現した絵文字を全部で176種類用意していたそうです。
絵文字が日本から世界へ
言葉だけでは伝わらない気持ちやニュアンスを表現できる絵文字は、日本中にあっという間に広まりました。2010年には文字コードの共通規格である「Unicode6.0」に正式採択され、2011年にはAppleがリリースしたiOS5にも絵文字が標準搭載されるようになり、日本で発祥した絵文字が世界に普及していったのです。
海外から見た絵文字文化
明日にでも話のネタに使えそうな「海外から見た絵文字文化」に関する小ネタをまとめてみました。
emojiの「emo」はemotionじゃない?
少し前に、海外のネット掲示板で話題となったのが「emojiの『emo』はemotionじゃない」という事実。私たち日本人にとっては当たり前のことですが、実は海外ではemojiの語源が「絵文字」だと知らず、emotion(感情)が語源だと勘違いしている方が多いようです。私たちにとってはそっちのほうがびっくり…でも、納得できる勘違いですよね。
ちょっと不思議?な絵文字
説明がなくても意味が伝わる絵文字。でも、海外の方にとっては、なんのことか分からない絵文字も多いようです。たとえば、チューリップの形をした名札の絵文字。日本人なら「ああ、あれね」と簡単にイメージできますが、海外の方にはあの絵文字が『Tofu on Fire(燃えている豆腐)』に見えるんだとか。チューリップが炎、名前を書く白い四角の部分が豆腐なんだそうです。
ほかにも温泉マークがホットプレートで料理をしているように見えたり、三色団子が斜めになった信号だと思われていたり、これはどういう意味だとときどき話題になっているようです。
ニューヨーク近代美術館に絵文字が収蔵される
絵文字に関するびっくり海外ニュースといえば、2016年にニューヨーク近代美術館に絵文字が収蔵されたことでしょう。ニューヨーク近代美術館といえば、10万点以上の所蔵品を誇り、ピカソやダリ、ゴッホなど著名な画家の作品もコレクションしている近現代美術の殿堂。そんな美術館の一角にNTTドコモが開発した最初の絵文字176個が常設収蔵品として収蔵されているのです。日本発祥の絵文字が、人々の世界を変えた文化として認められた証…といっても過言ではありません。
もしニューヨーク近代美術館に訪れる機会があれば、日本人としてぜひ見ておきたいものですね。